「これに懲りずに」という言い方
「これに懲りずにまたお越しください」と大人は言います。
大人になって初めて使う言葉というのがありますが、「これに懲りずに…」という言い方は、かなり大人になってから使い始める言葉じゃないかと思います。子どもや大学生や新入社員は使いません。また、「広辞苑」にも載ってません。
わたしは、この言葉を使うのにとてもためらいを感じます。
なぜなら、この言葉を使うときに、こころの中で「懲りたでしょ? 懲りたでしょ?」と思っていると相手に思われるのではないかと心配だからです。
だから、これはどう考えても相手が懲りたとしか思えない状況、お互い苦笑いしか出ないようなときにしか使いません。
「もう、これしか言葉が出ないです。ごめんなさい」というニュアンス。
でも、最近「こちらがよくないことをしたことは分かっています。でもまた来てほしいとも思っているんです」というくらいの意味で使われることが多くて、少々戸惑いを感じます。
そういう使い方されると、ちょっと図々しさが出るなあ、と思います。
相手に悪いことをしてしまったけど、また来てほしいっていう、その気持ちが図々しいのだと思います。
もう、相手に失礼をしてしまったと思ったら、謝るだけにしぼったほうが、すがすがしいかもしれません。
ネットで見ると、ビジネスマナーで相手に不快にさせない表現として推奨されていたり、手紙の書き方文例でも使われている場合もあります。が、言われた側が「なんか変じゃない?」と感じているという意見もちらほらあり、言う側と、言われた側で受け取り方に食い違いが生じやすい言葉のように感じました。
「この表現、変じゃない?」という質問に、「これは、ふつうにビジネスマナーで使われているから、正しい表現です」という答えをしている人がいるけど、お客が変って感じる言葉を使わないのがビジネスマナーじゃないのかな?
自分ではなるべく使わないようにしたい、でも、言われたら不快に感じる必要はない、っていうのがこの言葉とのつきあい方として正しいように思いました。
今日は、これでおしまい。