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猫とコーヒーと物語のブログ

ヴァロットンがすきだ

ずいぶん前の展覧会の図録(*)です。フェリックス・ヴァロットンの項目にこんなことが書いてありました。
「自分自身を否定する、引き裂かれた人間であった彼は、画家としても自分と折り合いをつけられない性質を持っていた。彼の内面を占めていたのは三つの力である。それらの力を互いに調和させることはほとんど不可能に思われるが、彼は多くの場合にそれを成し遂げたのであり、そこに彼の偉大さの片鱗(へんりん)がある。その三つの力とは、写実への情熱、装飾化の野望、そして表現主義の恥ずべき誘惑であった。」
これを読んだとき、わたしは「このヴァロットンという人が好きだ。……それも、とても、とても、好きだ」と思ったのです。
自分自身を否定する表現者
自分を消せば消すほど出てくる自分に嫌悪する表現者
そういう姿を想像しただけで、わたしは彼に強くひかれたのです。
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写実はありのままを写しとるということであるけど、装飾は美しく飾ることです。そして、表現主義とは感情を表すということです。どれもばらばらの方向性です。そのどれもが自分の求めるものだと気づいたとき、彼はどんな思いがしたでしょう。
人は矛盾するものを前にすると、どちらかを選び、矛盾を解こうとするけれど、彼は引き裂かれたまま前に進んだのです。
そうして生まれたものは、何だったのでしょうか。
豊かな省略。
甘くないキュートさ。
現実からそっぽを向く風景。
わたしは、彼の絵にこんな印象を受けました。
その「ヴァロットン展」が、開催されるのです。
2014年6月14日から9月23日。東京の三菱一号館美術館にて。楽しみでしようがありません。わくわく。
好きなものにまた会えるということは、こんなに楽しいことなんだと、うきうきする毎日です。
今日は、これでおしまい。
(*)…1996年「世紀末ヨーロッパ象徴派展」(Bunkamuraザ・ミュージアム)の図録です。引用した記述は、ベルナール・ドリヴァルという人のヴァロットンに対する評価として掲載されているものです。
三菱一号館美術館の「ヴァロットン展―冷たい炎の画家」のサイトはこちら→http://mimt.jp/vallotton/top.php