月の光は何色
子どもだったころ、月の光は青い、あるいは青みを帯びている、と思っていた。
隣の家の屋根が瓦でできていて、月の明かりでぴかぴか青く光っていたような記憶がある。
そして、自分が月光に照らされると肌は青白く見えていた。
でも、今、月の明かりを見ても、青さは感じない。
月光の下にある屋根を見ても、水面を見ても、土を見ても、青さは感じない。
あくまでも透明で、こころのなかで受ける印象も透明か黄色という気がしている。
月の光の色が変わってしまったとは考えにくいから、こちらに原因があるにちがいない。
小さいころと大人になってからでは色覚に変化があるとか。
青と思い込んでいるから記憶も青に染まってしまったとか。
ほんとうは今も青いのに、それを感じ取る能力がなくなってしまったとか…。
月の光に色はないと思うようになっても、記憶のなかの月の光は青い。
わたしは青い月光をかかえている。
それでも、丸い月がのぼると、青のかけらがどこかに落ちていないか探してしまう。
また、青い月の光が見たい。
今日は、これでおしまい。