こばなし
小さいおはなしをいくつか。
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01 残されたもののはなし
わたしは、仕事で力尽きてしまい、庭がどうしようもなくなったため「草刈りのプロ」という人に草取りをお願いしてみた。すると、びっくりするほど根こそぎ草を刈ってくれて、それはそれは感心したのだけれど、いくつか刈り残されている小さな草があった。
(これは、どうして刈らなかったんだろうね?)
と思ってそのままにしていたら、ぐんぐん伸びて、ついに、きれいな白い花をつけた。
それは百合の花だった。
(プロってすごいな)
と、わたしは心の底から思った。
02 つかまったもののはなし
ある家に、コウモリが迷いこんできた。お母さんはきゃあと悲鳴を上げ、お父さんは子どもが使っている網をじょうずに使ってコウモリをつかまえた。
夫婦は、寝ている子どもにも見せてやりたいと思い、コウモリを虫かごの中に入れておいた。
翌朝、その虫かごを見ると、コウモリは消えていた。
フタはしっかりと閉めてあり、開けられた形跡も見当たらない。
コウモリは、夕方どこからともなく現れて、暮れなずむ空を舞うけれど、どうやら跡形もなく消える方法も知っているようだ。
03 見たくてしようがないもののはなし
朝顔を育てたくなって、店で青い朝顔のたねを買ってきた。
鉢に土を入れ、種をまいて水をやった。
朝顔は、元気よく育ち、つぼみがついた。そのつぼみは、先がほんのり赤い色をしていた。
(青い朝顔でも、つぼみのときは赤いのかな?)
と思ったが、翌朝見てみると赤い花が咲いていた。
(青い朝顔でも、始めは赤い花が咲くのかな?)
と思ったが、いつまでたっても赤い花ばかりが咲いた。
そこで、とうとうあのたねは、青い朝顔じゃなくて赤い朝顔のたねだったのだ、と気がついた。
青い朝顔が見たくて、毎日毎日自分をだましていたのだった。
赤い朝顔もきれいなのに、初めにもった期待と、それを裏切られたという気持ちがあって、ついにその赤い朝顔を愛情をもってながめることはできなかった。
なんだか、気の毒なことをしてしまった。
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どれも実際にあったおはなし。
今日は、これでおしまい。


