ちはるさんが、関根くんをつかまえます(中編)
前編を読んでない方はまず、こちらへ⇒ちはるさんが、関根くんをつかまえます(前編)
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お昼になりました。さあ、ちはるさんは席でお弁当を広げました。
「あれ、料理とかつくるの」
と、関根くんが聞いてきました。さっそく手ごたえありです。「むし図鑑」のいうとおり!
「うんまあね」
「へえー」
ちょっと沈黙があり、関根くんがちはるさんの料理のうでをうたがっているのではと、ちはるさんはどきどきしました。
「家に、ゴマ油とかある?」
「……ない」
「ふうん」
と、関根くんは外に食べに出かけてしまいました。なんだか、とっても失敗をした気分です。
ゴマ油で、何がわかるっていうんでしょう! 料理をする人かしない人か、料理がじょうずな人かそうでない人か、判断できてしまう魔法の質問なんでしょうか。
だとしたら、ちはるさんが料理をあまりしないこと、そしてそれほどじょうずではないことが関根くんにばれてしまったかもしれません。
ちはるさんは、落ち込みました。
でも、次の日も、お弁当をもっていきました。すると、今度は、
「ねえ、ゆず胡椒(こしょう)とか、もってる?」
と関根くんは聞いてきたのです。そんな、聞いただけでくしゃみがでそうな調味料、ちはるさんは知りもしません。
が、はっと気がついたのです。関根くんは、もしかして料理が得意なんじゃないかと。
料理が得意な人に料理ができることをアピールするのは、それは本当は得意ではないからなおさらですが、ぐの骨頂です!
とっさに、
「そうだ、池袋にすごいお店見つけたんだ」
とちはるさんは言いました。
「へえー、じゃあ連れていってよ」
と関根くんは答えました。ちはるさんの心のなかは、ぴょんぴょんはねました。
「すごいってどうすごいの?」
「それは……ないしょ」
こうして、ちはるさんは、その週の金曜日に関根くんとデート? することになったのです。
もちろん、ちはるさんは、会社から出て電車で帰る途中、もうスピードでスマホを使って「池袋」「すごい店」というキーワードでGoogle検索したんですけどね。
さて、かんじんのお店ですが、池袋にあるすごいお店には、舌がとろけてなくなるというイタリア料理屋さんと、ずいぶんお魚がおいしいと評判の居酒屋さんがありました。関根くんは、「ゆず胡椒」を使うくらいですから、和食が得意そうです。いつも和食を食べつけているから外食は洋食がいいのか、やはり外食も和食がいいのか、ちはるさんは迷いに迷いました。
ここはいちかばちかです! ちはるさんは、お魚がおいしい居酒屋さんのほうを選びました。
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後編へつづく ⇒ ちはるさんが、関根くんをつかまえます(後編)
今日は、これでおしまい。