鹿にまじる男のはなし
「御伽草紙(おとぎそうし)」に、えっと思うような話があったので、意訳してみました。
鹿にまじる男のはなし
剡子(ぜんし)というとても親孝行の男があった。
その両親が、ある時、そろって目を病んだ。
人の話によると鹿(しか)の乳が目の病に効くという。
剡子はそれを聞いて、ならば得ようと思い立ち、鹿の皮をかぶって鹿の群れにまぎれこんだ。
運悪く、そこに猟師が現れた。
彼は剡子をほんものの鹿だと思い、ぎりぎりと弓を引き絞ってねらいを定めた。
剡子はあわてて立ち上がり、
「ちょ。待って。鹿じゃないって。
親がね、親がね、いろいろ事情があるもんだから。
こうして鹿のかっこうをしちゃってますけど」と、さけんだ。
猟師はおどろいて、くわしいわけをたずねた。
剡子はこうこうこういうわけで、鹿の皮かぶってましたと話してやった。
こうして剡子は、猟師の矢からのがれ、無事に家に帰ることができたのだった。
いろいろ、おかしいですよね。
剡子は、何をやってるんでしょうか。
しかも、そんなおかしいのがまぎれこんでいるのに、鹿たちは何をやってるんでしょうか。
最後、鹿の乳はどうでもよくなってますしね。
この話はもともと中国の二十四孝(にじゅうしこう)という親孝行ベスト24の話だとか。
こういう話がランキングする大陸のおおらかさ。