あおやぎ珈琲

猫とコーヒーと物語のブログ

鹿にまじる男のはなし

「御伽草紙(おとぎそうし)」に、えっと思うような話があったので、意訳してみました。

鹿にまじる男のはなし

剡子(ぜんし)というとても親孝行の男があった。

その両親が、ある時、そろって目を病んだ。

人の話によると鹿(しか)の乳が目の病に効くという。

剡子はそれを聞いて、ならば得ようと思い立ち、鹿の皮をかぶって鹿の群れにまぎれこんだ。

運悪く、そこに猟師が現れた。

彼は剡子をほんものの鹿だと思い、ぎりぎりと弓を引き絞ってねらいを定めた。

剡子はあわてて立ち上がり、

「ちょ。待って。鹿じゃないって。

親がね、親がね、いろいろ事情があるもんだから。

こうして鹿のかっこうをしちゃってますけど」と、さけんだ。

猟師はおどろいて、くわしいわけをたずねた。

剡子はこうこうこういうわけで、鹿の皮かぶってましたと話してやった。

こうして剡子は、猟師の矢からのがれ、無事に家に帰ることができたのだった。

zenshi.JPG

いろいろ、おかしいですよね。

剡子は、何をやってるんでしょうか。

しかも、そんなおかしいのがまぎれこんでいるのに、鹿たちは何をやってるんでしょうか。

最後、鹿の乳はどうでもよくなってますしね。

この話はもともと中国の二十四孝(にじゅうしこう)という親孝行ベスト24の話だとか。

こういう話がランキングする大陸のおおらかさ。