ステンレスの話
今日は、金属の話です。主婦という立場で台所に立っておりますと、一番お世話になっている金属というのは、お鍋じゃないかと思います。
鉄、銅、ステンレス、ホーローと種類も加工もさまざまあり、目的に合わせてお鍋をそろえるといいと言われますが、そうそう置く場所もとれませんし、自分にとって使いやすい、えりすぐりのものを備えておくのが一番です。
わたしが最もお鍋としてすぐれているのでは…と思うのは、ステンレス製のお鍋です。
マイナーなドイツのELO社がつくっている多層構造の鍋を使っていますが、沸騰後、火を小さくしてもぐつぐつが止まらないし、水がなくなってもこげつかないし、その性能に驚かされることもしばしば。さびにくいし、傷もつきにくいようです。
そうそう、ステンレスは、さびにくい金属といわれます。
が、「もらい錆(さび)」という現象が起こります。
さびにくいはずが、さびた鉄が着いていると、そのさびが移って自らさびてしまうのです。
「もらい錆」って、なんだか、演歌に出てきそうな名前です。ほだされた感じがひしひし漂ってきます。
そもそもステンレスは鉄とニッケルの合金ですから、もともと鉄分をもっているのです。
その出自を、思い出すんじゃないでしょうか。
「そういえば、俺にも鉄が入っていたんだ」と。
強いところで自分が出るのではなく、弱いところで自分が出てくるのが、また演歌です。
「もらい錆」という言葉はどなたがつけた言葉なんでしょう。日本には読み人知らずのすてきな和歌も残っていますが、こういう、つけ人知らずのなかなか詩的な名前のものもありますね。
すぐれものだけど、もらい錆なんてしちゃうあたりに日本の情緒を感じるので、やっぱりわたしは、これからもステンレスのお鍋を大事に使っていくと思います。
今日は、これでおしまい。