各駅停車の旅はいいよ
旅は、各駅停車の電車で行くにかぎります。
べつに鉄道オタクというわけではありません。
あるとき、青春18きっぷを使って遠くまで旅行したら、それがとても楽しかったのです。
それ以来、時間が許すかぎり移動は各駅停車の電車にしています。
青春18きっぷは、夏休み、冬休み、春休みにあたる期間限定で発売される、JRの1日乗り放題の切符で、5枚つづり11,500円で販売されています。
つまり、1日2,300円で、JRの電車(各駅停車・快速のみ)が乗り放題ということになります。
例えば、東京駅を朝の8時に出発して各駅停車で行くと、6回くらい乗り換えて京都駅には夕方16時半くらいにつきます。
時間は8時間半かかりますが、青春18きっぷを使えば2,300円で東京から京都まで行けることになります。
もし青春18きっぷを使わない場合でも、各駅停車なら、7,980円で行けます。
新幹線(のぞみ)を使えば、2時間20分でつき、料金は12,710円ですから、比べてみると青春18きっぷの安さがひかります。
この青春18きっぷですが、18歳までしか使えないと思っている方がいらっしゃるようなのですが、そんなことはありません。
子ども料金というのはありませんが、年齢に制限はなく、子どもからお年寄りまでだれでも使うことができます。
こころが18歳であればいいのです。
8時間も電車に乗っているのが苦痛、と思われるかもしれませんが、続けて乗っている時間というのはせいぜい1時間~1時間半ということが多く、ちょこちょこ乗り換えをするので、それほど腰が痛くなるという感じではありません。
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わたしは、ある夏、中国地方を九州へ向かう各駅停車の旅をしていました。
そのとき、山口県の南岩国駅というところで乗り換えのために降りたのですが、電車から降りてそのホームから見たながめに思わず「うわーっ」と声をあげました。
そこには、一面の蓮の畑が広がっていたのです。
どこまでも続くみどりのじゅうたん。
ところどころ風のありかを示すようにおおきな葉が白くひるがえっています。
ホームからは見えないのですが、その蓮の畑の中には道が通っているらしく、自転車が通り過ぎていきます。その自転車はめずらしくもないように蓮の葉の連なりをすぎていきました。
地元の方にとっては、この延々とつづく蓮の畑は、見慣れた光景、日常の風景なのです。
わたしはこの風景を見たとき、わたしたちが便利と思って使っている新幹線というのは、こういう風景をすっとばして走っているんだな、と思ったのです。
また、各駅停車の電車には、地元の人が乗ってきます。
車で移動できない高校生がとても多いです。
九州で、わりと街にある駅から乗ってきた高校生の女の子が、2時間近くずっといっしょに乗っていて、どんどんどんどん山奥になってある駅で降りたとき、胸に迫るものがありました。
彼女は毎日こうやって通学しているんだ、というのがわかったからです。
各駅停車の乗り降りには、地元の人の生活が出るのです。
こういうことは、よそいきのお客さんが多い新幹線ではわかりにくいものです。
速いのは便利。でも、遅いからこそ、見えるものはあるよね、とわたしは思います。
各駅停車の地域の生活の見える風景はなかなかのものです。
わたしは、そういうものをながめるために「旅」をしているのかもしれません。
今日は、これでおしまい。