バスにまつわる2人の言葉
01 バスにまつわる言葉、その1 大学のサークルの先輩が、あるとき、 「バスの運転手って、すごいテクだよなあ」 と言いました。 その言い方が、いかにも心の底からそう思っている、という言い方だったので、わたしはそれを信じました。わたしは運転免許をもっていないので、ほんとうはバスという巨体を運転する技術のすごさはわかりません。でも、ほんとうのことを言っている人の言葉は、聞けばわかるというものです。心からそう思って放った言葉にはそれくらい力があるんだろうと思います。
ちなみに、この先輩の語録には、「値段の高い焼きプリンとかもうまいけど、やっぱりプッチンプリンが、うまいよなあ」というのもありました。この言葉もすごい迫力でわたしの心に迫りました。02 バスにまつわる言葉、その2 ぼんやり街を漂っていると、すこーん、と耳に入ってくる言葉、というのがあります。この言葉がそうでした。 歩いていると、後ろのカップルの男の人のほうが、 「バスって、街との密着度が高いよな」 と言いました。
あっ、そのとおりだ! とわたしは心の中で思いました。
電車は、線路というのがだいたいまっすぐですから、街をぬって走るという感じはしません。
でも、バスは、曲がったり、止まったり、循環したり、自在に街をぬって走ります。
お店の看板の字が読めるくらいの速度ですし、通りを歩いている人の様子もわかります。
電車の運転手には話しかけられませんが、バスの運転手には、行き先を尋ねたりというふうに声をかけることだってできます。 お客と運転手の関係もより気さくです。 住んでるところだって、駅よりバス停のほうが近い人のほうがきっと多いでしょう。
この男の人の言葉に対して、女の人はそうだね、と返して、男の人はどのへんが密着度が高いと思うか説明していました。 会話って、聞くつもりじゃないけれど耳に入ってくるときってあります。こういう会話が耳に入ってくると、わたしの心はとてもなごむのです。
海外の有名なホテルの支配人が、どういう客に一番ホテルに来てもらいたいかという質問に対して「カップルの客」と答えた、というのを「山の上ホテル物語」という本で読みました。 それは、カップルの場合、気前よく支払いをするからだ、というだけではないように思います。 お互い、楽しく過ごそうという気持ちが、気持ちのよい会話を生んで、空間全体が気持ちがよくなるからじゃないかと思います。もちろん、それはカップルにかぎらないけれど。
街に、気持ちのいい会話があふれるといいね。今日は、これでおしまい。